どう仕様もない感動がせり上がってきて、ボクは泣き出しそうにさえなってしまった。
ううん、もしかしたらホントに泣いちゃってたかもしれない。
【?】
「……どうしたの?」
向かい合った人の、そんな言葉がなければ。
【響】
「ッ…………、あ…………」
どうしたの?
そう聞かれて初めて、ボクは何ひとつ……話しかける「口実」を何一つ用意してなかった自分に気が付いた。
【響】
(あ……っ、あああぁぁあ……!!)
ハッと青ざめて狼狽、しても、もう遅い。
彼は不思議そうに、「突然声をかけてきた変な女」の姿を見つめてる。
ボクはギュッとスカートの裾を握って、パクパク酸欠の金魚みたいに喘いでるだけ。
【響】
(しまっ……、しまった……、こ、これじゃホントにただの変な女じゃないか……っ!)
何て言えばいい?
夢の事を話……したりしたら、それこそ本物の電波になっちゃう!
【響】
「あのっ、あのっ、えっと……ボク……」
心臓が口から飛び出しそうだ。
何でそれらしい理由の一つも考えておかなかったんだよ!
母さんのあの口からでまかせ能力がこんなに羨ましく思う瞬間が来るなんて……!
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