小夜「カッ君、本当に寝てるの?」
背中の向こうから母さんの声が聞こえてくる。
海人「………」
今更、寝てないなんて言えない。ここはもう寝た振りを押し通すしかない。
ボーっとなってくる頭で、そんな事を考えていると、
小夜「本当に寝てるのね……今日のお礼、言おうと思ってたのに」
母さん、僕の方に近づいてきてる?
すぐ後ろに気配を感じる。声も真後ろから聞こえてくるようだった。
小夜「……今日はありがとう。カッ君が居てくれて、良かった」
母さんの手が、僕の肩に触れる。
小夜「あの時、私、死ぬ程怖かったわ……あのまま、あの男の……」
肩に置かれた母さんの手に力がこもる。
小夜「でも、ね。カッ君が帰って来た時、母さん真っ先にカッ君の事を考えたのよ」
何時の間にか背中には熱く柔らかい双丘が当たっていた。
母さんは自らの体を押し付けながら、夢見心地のように言葉を紡いでいく。
小夜「カッ君を危ない目にあわせる訳にはいかないもの……最初は、そう考えてたの。でも……」
小夜「でもね……カッ君が、母さんを放せって言ってくれた時……あの時、私は……」
母さんが背中に顔を押し付ける。
その為、最後の言葉は聞き取る事が出来なかった。
僕の薄いシャツを通して、母さんの熱い息が触れる。
今まで感じた事のない快感が、背中から体全体に広がっていくようだった。
小夜「あんな事、考えちゃダメなのにね……」
再び母さんの声がハッキリと聞こえてくる。
あんな事?
一体、何の事を言ってるんだろう。
不思議に思いつつも、今はまともに考えを纏める事は出来なかった。
押し付けられた母さんの柔らかい肌。
そして、母さんが口を開く度に漏れ出る熱い息が、僕の快感を刺激し続けていたから。
小夜「もう少し、もう少しだけこうしていさせて………」
願いを込めるような切実な声。
今すぐにでも振り返って、母さんを抱きしめたい。
その欲求は、僕の理性を押し流そうとするように、次から次へと湧き出てきていた。

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