そこには大股を広げた女性が、顔をしかめたまま尻餅をついていた。
玉江「匠ちゃん、いきなり飛び出してくると危ないでしょ」
『工藤 玉江』いつも母さんに、嫌味や面倒な仕事を押し付けるPTA会長。
その人が、今は初めて聞くような甘く優しい声を出している。
玉江「いきなり匠ちゃんが飛び出してくるから、ママ尻餅ついちゃったわ」
少し顔をしかめると玉江さんは自らの腰をさする。
海人「………」
ひょっとして僕の事を、匠だと思っているのだろうか。
玉江「匠ちゃん? 匠ちゃんは大丈夫よね?」
顔を上げると、目を細めながら玉江さんが僕を見てくる。
まだ、僕の事を匠だと思っているみたいだけど………。
何が何やら訳の分からないまま、玉江さんを見下ろす。
そう言えば玉江さん、ぶつかった拍子に眼鏡を落としてしまったみたいだ。
眼鏡を外すと、目の前に立っているのが誰かも分からなくなる程、視力は悪いのだろうか。
そんな事を考えながら視線を下に落とす。
海人「あ……」
大きく開かれた股を見た瞬間、僕は小さく声を漏らしてしまった。
ムッチリとした太ももと、その奥にあるレースのついた下着。
透き通るように白い肌だけに、下着の色がチカチカと僕の目を刺激してきた。
玉江「もぅ、匠ちゃんったら、黙りこんじゃって。お返事してくれても良いでしょ?」
少し拗ねたような声を出すと、玉江さんは頬を膨らませた。
玉江「ママ、心配したのよ。お二階から匠ちゃんの大きな声が聞こえてきたから。慌てて上がって来たんだから」
本当に今、目の前で甘えるような声を出しているこの人は、あの嫌味なPTA会長なのか?
信じられない気持ちのまま、玉江さんを見つめ続ける。

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