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土気色だった紗枝さんの顔に、少しずつ生気が戻ってくる。
唇が微かに震えたかと思うと、ユックリと紗枝さんの瞼が上がった。

紗枝「三枝先生………」
小さく呟くと、紗枝さんが
キュッと俺の手を握り返してきた。
紗枝「んっ、そうだったわ……私ったら、まだお礼を言っていなかったわね」
紗枝さんの顔に、ようやく微かな笑みが浮かんだ。
剛「俺は、何も………」
紗枝「三枝先生が居なかったら、きっと私もあの子も助からなかったわ。 ありがとう………」
剛「紗枝さん……」
紗枝「………」
手を握り締めたまま、泣いているようにも見える紗枝さんの顔を見つめる。
紗枝「……もう、遅いわね」
剛「え……?」
独り言のようにポツリと呟いた紗さん枝の言葉。その言葉を聞いた途端、何故かザワザワと胸が波立ち始めた。
言葉の意味を探るように俺は、グッと身を乗り出す。
剛「何が、遅いんですか……?」
紗枝「……時間、よ」
少しの躊躇いの後、紗枝さんは俺から視線を逸らして、小さな声を出す。